マスターデータ管理(MDM)とは? 事例・メリット・始め方など詳細解説

2024年11月27日

2024年11月11日

マスターデータ管理

ビズリポ編集部

いま、マスターデータ管理(MDM)の必要性が急速に高まっています。一方で、マスターデータ管理の体制づくりは非常に難しく、頭を悩ませているという人も多いのではないでしょうか。

本記事では、マスターデータ管理とは何か、その重要性やメリット、導入手順、実際の導入事例について、具体的に解説していきます。

マスターデータ管理(MDM)とは?

マスターデータ管理(MDM)とは

マスターデータ管理(MDM: Master Data Management)とは、事業を営む過程で必要となるさまざまなデータの品質と一貫性を確保するため、データの形式や仕様を一元的に管理する取り組みのことです

そもそも「マスターデータ」とは?

マスターデータとは、事業を進める過程で繰り返し参照してさまざまな業務に用いる基盤のデータで、中長期的に変化しない静的なデータのことをいいます。顧客情報、商品情報、従業員情報などが代表例で、事業を営む上で欠かせないデータの一つです。

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なぜ必要? マスターデータ管理が重要視される理由

近年、マスターデータ管理の重要性が高まっています。それはなぜでしょうか?

現代のビジネス環境では、ほとんどの企業が複数のアプリケーションやシステムを駆使して業務をこなすようになっています。その結果、システムごとにデータの分断(サイロ化)が起きています

データがサイロ化した状態では、部門間・システム間でデータの連携ができないため、業務効率が下がります。また、システム間のデータに一貫性が無いため、事業や施策のパフォーマンスを正確に見極めるのも難しくなります。

こうした問題に対処するため、マスターデータ管理に対する意識が高くなっているのです。

マスターデータ管理がもたらす5つのメリット

マスターデータ管理を導入することによって得られるメリットには、どのようなものがあるでしょうか。ここでは、特に重要な次の5つのメリットについて、具体例を交えて解説します。

  1. 業務効率化とコスト削減
  2. 意思決定スピードの向上
  3. サービス品質と顧客満足度の向上
  4. コンプライアンスの強化
  5. データ分析精度の向上

1. 業務効率化とコスト削減

マスターデータを統合的に管理していない場合、あるシステムと別のシステムを連携して動かすには、その都度データの変換や加工作業が必要になります。こうした作業は非常に手間がかかるだけでなく、煩雑になりやすく、人的ミスも発生しやすいものです。業務効率を大きく下げる要因になり、結果的に余計なコストを発生させてしまいます。

マスターデータを統合的に管理できるようになると、システム間のデータ連携がスムーズになります。標準となるデータが明確になるので、データ変換の煩雑性はかなり低減されるのです。

たとえば、基準となる「商品マスターデータ」を整備しておけば、一度の変換で「Amazon出品用データ」「卸先小売店用納入商品データ」などを出力することが可能です。また、たとえば「在庫管理システム」でも共通の「商品マスターデータ」を使うことができるので、各ECモールの売れ行きと在庫数量を一元的に把握することができるようになります。

2. 意思決定スピードの向上

毎回複雑なデータ変換を経なければ重要指標を把握できない場合、データを元に素早い意思決定を下すことができません。

マスターデータが全社的に整備され、常に部門やチーム間のデータに一貫性を確保できるようになれば、いつでも迅速に意思決定を行うことができます。

たとえば、一貫した「顧客マスタ」を整備しておけば、マーケティングチームが管理している「有料課金ユーザーデータ」と、カスタマーサポートチームが管理している「解約ユーザーデータ」を、複雑なデータ突合プロセスなしで、簡単に紐づけて分析することが可能になります。

3. サービス品質と顧客満足度の向上

一般的に、マーケティング部門はMAツールで「見込客」のデータを管理します。また、セールス部門はSFAツールで見込客の中で顧客になる見込みの高いユーザーのデータを管理し、カスタマーサポート部門はCRMツールで顧客データを管理しているでしょう。これらのデータには一貫性がないので、顧客の全体像を把握するのは困難を極めます。

そこで、統合的な「顧客マスタ」を整備しておくと、「顧客マスタ」を標準データとしてすべての部門・システムのデータに一貫性を持たせることができます。キャンペーンオファーや顧客対応の精度が上がるため、顧客満足度が高くなり、業績向上につながります。

4. コンプライアンスの強化

個人情報保護法やGDPRなど、データに関する法規制は年々厳格化しており、違反した場合のペナルティも大きくなっています。マスターデータの品質が低く、管理体制が整っていない状態では、コンプライアンス違反のリスクが高まります。

マスターデータを整備し管理体制を整えることで、コンプライアンスリスクを軽減することができます。

たとえば、顧客情報を統合的な顧客マスタに集約し、アクセスログや変更履歴を記録できるようにしておくことで、個人情報の取り扱いを透明化し、監査対応をスムーズにすることができます。

5. データ分析精度の向上

データの品質が低く一貫性がない状態になっている場合、現在の戦略や行った施策が業績改善にどのくらい寄与しているのか把握することすらできません。

マスターデータを整備することで、各システムに蓄積されたデータを紐づけて統合することができるようになります。これにより、現在の戦略や具体的な施策の成果を正確に分析できるようになります。

マスターデータ管理の始め方① 事前準備の手順

まず事前準備として、次の3つのステップを進めてください。

①目的と目標の明確化

マスターデータ管理を行う目的を明確にし、事業計画と整合的な目標を設定しましょう。

マスターデータ管理には、一定の労力とコストがかかるものです。コストと労力がかかるなら、マスターデータ管理の体制を整備した結果、何をどの程度改善させるのか、明確にしておかなければ、やるべきかやめるべきか判断することすらできません。

加えて、この後の手順をスムーズに進めるのも難しくなります。「データ管理にかかるコストを50%削減する」のと、「マーケティングの費用対効果を30%向上させる」のでは、管理すべきマスターデータも、巻き込むべきステークホルダーも、導入すべきシステムも異なるからです。

②ステークホルダーの特定と巻き込み

①で定義した目的と目標に応じて、関与すべき部門や担当者を特定し、MDM導入プロジェクトの参加者として招集しましょう。なお、プロジェクト責任者としては、ある程度データベースに関する知識のある情シス部門の担当者を据えることが多くなっています。

③現状のデータ管理状況の把握

招集したプロジェクトメンバーを中心に、現状のデータ管理プロセスの把握と共有を行います。実際の業務において、どのような手順でデータを取り扱っているのか洗い出すことで、マスターデータ管理の必要性と改善点を明確にしていきます。

マスターデータ管理の始め方② 具体的な整備の進め方

続いて、次の5つのステップに従い、マスターデータ管理体制の整備を進めます。

①データガバナンスの確立

まず、どのような仕組みでデータの品質と一貫性を確保・維持するのかを固めます。データの所有権、アクセス権、管理ポリシーを定義し、データガバナンスフレームワークを構築します。これにより、データの品質と一貫性を維持します。

②MDMツールの選定

はじめに定義した目的に従い、どのようなシステムでマスターデータ管理を行うか検討します。自社開発するのか、外部システムを導入するのか、機能とコストを踏まえて判断しましょう。

【関連記事】マスターデータ管理システムとは? 製品比較&選び方と注意点

③データの統合とクレンジング

各システムからマスターデータを収集し、それらを統合することにより、オリジナルのマスターデータを作成していきます。データに重複や不整合、欠損が無いようクレンジングを行ってください。また、データの形式や各項目の命名規則を標準化し、ガイドラインとしてテキストにまとめておくことが重要です。

④運用テストの実施

全組織への導入を行う前に、限られた範囲でテスト運用を行い、ワークフローやツールの有効性を検証しましょう。マスターデータ管理の体制構築は部門をまたぐ大規模プロジェクトとなるため、頻繁な体制変更は現場の混乱を招きやすいです。テスト運用を経て問題点を洗い出し、改善策を講じた上で全体導入に踏み切るのが賢明です。

⑤継続的な改善とメンテナンス

定期的に運用体制を見直し、改善を続けます。データ品質を維持できるよう、あらかじめメンテナンスを行う時期と人員、仕組みを確保しておくとよいでしょう。

マスターデータ管理の導入事例

具体的なケースをもとに、マスターデータ管理における課題の解決方法を見てみましょう。

200社のサプライヤーから仕入れた商品データを統合し商品マスタを整備(専門商社)

もともと専門商社として、サプライヤーから仕入れた商品を束ね、顧客に卸売する事業を展開していたA社。さらなる事業拡大を見据えて、新たに自社ECサイトやECモールなど、直販チャネルの拡大を進めていました。

当初、サプライヤーは16社だけだったため、1人の担当者がエクセル関数とマクロを駆使して、サプライヤーから受け取った商品データを「自社EC出品用商品データ」「顧客向け購買システム用カタログ」「Amazon出品用商品データ」などに変換して対応していました。

しかし、次第にサプライヤーが増え、私たちにご相談をいただいた時には200社を超えていました。当然、エクセルでは対応しきれないということで、ETLツールを導入。仕入先から受け取った商品データをETLツールで変換する体制を整えました。

マスターデータ管理(MDM)の事例
ETLツールを駆使してデータ変換を行う体制を構築。しかし…

マスターデータ整備前のA社の課題

ETLツールの導入によって、エクセルより細かなデータ変換制御が可能になりました。ただし、ある問題が発生していました。

各サプライヤーから受け取った商品データをバラバラに変換していたため、商品名や商品カテゴリに混乱が生じていたのです。

一例を挙げると、次のような状態になっていました。

  • 同一商品なのに異なる商品名で出品されている
  • ほとんど同じ商品にも関わらず異なる商品カテゴリが付けられている
  • 漢字表記とひらがな表記で2つの商品カテゴリが作られている

また、毎度数百回もの変換をかけなければならないことから、変換作業は非常に煩雑になっていました。ETLツールの設定もかなり複雑になり、設定ミスや変換エラーも頻発していました。

マスターデータ管理(MDM)事例紹介:マスターデータ整備前
「200社 ✕ 4出力先」で計800回以上のデータ変換が必要に。

マスターデータ整備により販路拡大に成功

そこで行ったのが、マスターデータの整備です。

各サプライヤーから受け取った商品データを、一度独自の商品マスタに統合・集約。その上で、複数の出力先に応じでデータ変換を行う体制を構築しました。

マスターデータ管理(MDM)事例紹介:マスターデータ整備後
「200社+4出力先」で204回のデータ変換に圧縮。

これにより、複雑だったデータ変換プロセスが簡素化。データ変換回数は800回から204回と4分の1まで減らすことに成功しました。1つの商品マスタに商品データを集約したことで、カテゴリや商品名の混乱も短期間で解消できました。

結果、掲載商品点数は14万件から2,000万件に拡大。データ受領から商品掲載までの期間も2週間から1日にまで短縮し、3人いた専任担当者を1人に減らすことができました。

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ビズリポ

最大の特徴は、超強力なデータの自動変換機能。

多種多様なデータをさまざまなルールに従い自動変換し、システム上のマスターデータベースに保持。同時に、多種多様な形式・接続方法で外部に配信することができます。

変換ルールは、あらかじめ対応済みのシステム・プラットフォーム向けだけでなく、独自に定義することもできるので、どのようなデータ/システムとも連携させることが可能。

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この記事を書いた⼈

ビズリポ編集部

ビズリポの開発およびカスタマーサクセスのメンバーが書いています。

 

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